小川正美 人生はホントの自分に戻る旅。

普通の会社員から離婚して無職になり一念発起、弁護士になった私の半生とこれからのライフワークを綴ります。

My Works(attorney at law)①あえて前に出ない弁護士。

弁護士なのにおかしいと思われるかもしれませんが、私は、駆け引きや言い争いが嫌いです。

どちらかというと事案における自分の側の強みも弱みも冷静に把握できるほうだと思うし、
合理主義者なので、事案の落としどころを見つけたら、ネガティブなやり取りにエネルギーや時間を割かずに、早めに和解をしたいと思います。

もちろん、中には、判決にしなければならない/しなければ収まらない事案もありますが。


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交渉案件では、たまに、相手方と息が合ったかのように、
早期に良い落としどころで解決することがあります。



そんな時、相手方には、一見すると、代理人がいないこともあります。
いわゆる、「弁護士が前に出ない」ケース。

でも、送られてきた文章から、文書を作成したのが弁護士であることは、すぐに見抜けます。
我々の業界は、全員、司法試験合格後の研修で、文書作成教育を受けているからです。
(なので、弁護士以外の隣接業種の方の文章も
弁護士風に見せているけど弁護士ではないことはすぐに分かります。)


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本来、弁護士は、紛争に際して、クライアントの代わりに、代理人として交渉や訴訟をするのが仕事です。
こうした代理行為を報酬を頂いて行うことは、簡易裁判所司法書士代理制度などの例外はあるものの、原則として、弁護士しか行うことができません。


それなのになぜ、あえて弁護士が代理人とならず、クライアント名義で文書作成をすることがあるのか。


それは、
弁護士が前に出てくると、当事者が振り上げた拳を収められなくなり、紛争が激化することがあるからです。


特に、離婚など感情の要素が大きい案件では、例えば妻に弁護士がついた!となれば、
夫側は、生来の男性的な闘争心に火がついて、ほぼ100パーセントといっていいほど、自分にも代理人をつけます。


そうなると、泥沼の戦いに行く可能性が高く、
復縁は著しく困難になります。


また、普通の民事事件でも、関係者の人間関係や証拠から、
だいたい「落としどころ」が見えていることもよくあります。



そこで、私は、事案によっては、
弁護士としての関与は相談や文書作成代行に留めて、「前に出ない」戦略をおすすめしています。

(紛争が激化して代理人になるほうが、お金はたくさん頂けるんですけれどね!笑笑)



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近年は、弁護士人口の増加もあり、こうした「あえて前に出ない」というやり方をしない弁護士も増えてきているのかな、と感じます。

もっと早い段階で和解できていたら、当事者の方々の金銭的負担はもちろん、何より精神的負担が軽かっただろうなあ、と思うこともあります。

(対立する相手方がいることなので、思い通りにはなかなかいきませんけどね)


そんな中で、
相手方の弁護士があえて前に出て来ないとき、
私は、その見知らぬ弁護士の、
事案を見抜く目の確かさ、
相手方本人を説得する力量に、
密かに尊敬の念を送るのでした。

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