失った後に価値に気が付くということ。
よくあることです。
健康、愛情などが典型例でしょうか。
今日は、失う前に、価値に気が付いたというお話です。
写真のペリカンのボールペンは、私が司法試験に合格した時に、会社員時代の同期の友人達から貰ったお祝い品。かれこれもう10年も前の話です。
とてもおしゃれで、美しく、しかも「Masami」のネーム入りです。
でも、少し重量感がある。
芯を出すのには、ペンを一ひねりしなければならない。
忙しくて、いっぱいいっぱいで、余裕のなかった駆け出しのころの私には、ペンを両手で一ひねりする、たったそれだけの挙動が「無駄」「合理的でない」ように感じられました。
黒しかないものより、片手ワンタッチですぐ書ける、三色ボールペンの方が断然実用的!と思っていました。
重量感があることも、少し敬遠する理由になりました。
そして、心のどこかで、「このような高級ボールペンを普段使いするのは私には相応しくない。」と思っていました。
今年の6月から、事務所を代々木公園に構えるにあたり、心機一転、このボールペンを使ってみようと思いました。
書き心地はスルスルと滑りよく、確かに重量感はありますが気になりません。
何より、深刻なご相談を受けている時でも、良い意味でリラックスするための雑談のきっかけになったりします。
そして、10年も経つのに、全く劣化しない。使えば使うほど、手にフィットするような感覚がある。
もしかしたら、職人さんのモノづくりへの愛情を、受け取ることができたのかもしれません。
失う前に、価値に気が付いて良かった。
そして、その時その時に、相応しいモノがあるのですね。
年齢を重ねたからといって必ずしも高級路線にいくわけでもなく、自分に相応しいものが分かってくるのだと思います。
背伸びした過去も、自分にはまだ早いと思った過去も、愛おしい。